株式会社JMDC(本社:東京都港区、代表取締役社長兼CEO:松島陽介、以下「JMDC」)は、ウェアラブルデータを活用したメンタル疾患予兆検知アルゴリズムの研究を行い、当該研究に関する学術論文が国際学術誌「Frontiers in Digital Health」にて受理されました。

■JMDCがウェアラブルデータを活用したメンタル疾患予兆検知アルゴリズムを研究する意義
メンタル疾患の予防は社会的にも重要な課題ですが、健康診断で測定される血液検査などの客観的なバイオマーカーではリスク識別が行えず、効率的な予防介入が困難であるという課題がありました。 一方、JMDCは保険者向けに企画・開発し提供しているPHR(パーソナルヘルスレコード)サービス「Pep Up」を通じて、睡眠・運動等のウェアラブルデータの匿名加工データベースを構築しております(2022年2月時点で2万7千人超)。ウェアラブルデータとレセプトデータ・健康診断データが結びついた大規模データベースは世界的にも稀有なものです。

このデータベースにより、ウェアラブルで測定された日々の睡眠・運動等のデータとレセプトデータで追跡可能なメンタル疾患発症状況を結び付けた分析が可能となり、メンタル疾患の早期発見に繋がるアルゴリズムを構築できる可能性があると考え、ウェアラブルデータを活用したメンタル疾患予兆検知アルゴリズムの研究を実施しました。

■研究概要
研究では、JMDCデータベースにおける4,612名のデータを機械学習で解析し、メンタル疾患予兆検知アルゴリズムを構築しました。アルゴリズムのINPUT項目は過去3か月間のウェアラブルデータおよび直近の健康診断データであり、OUTPUT項目は将来1か月間のメンタル疾患の予測発症確率です。

アルゴリズムの予測性能を示すAUC(注)は0.712であり、メンタル疾患発症リスクのグルーピングに有用な精度を示しました。また、INPUT項目の相対的な重要性を示すFeature Importanceでは上位の項目はいずれもウェアラブルデータに関するものであり、健康診断の血液検査の数値等よりも重要度が上位となりました。構築されたモデルの詳細な検証では、睡眠リズムの乱れ、軽度な身体活動時間、飲酒や食生活の乱れがメンタル疾患のリスク因子となっていることが確認されました。特に、睡眠リズムの乱れは発症3か月前の時点で兆候が捉えられており、睡眠の安定化に焦点を当てた早期介入がメンタル疾患予防に効果的である可能性が示されました。
(注:AUCはアルゴリズムの予測確率にもとづくROC曲線下の面積。AUCは0から1までの値をとり、値が1に近いほど予測性能が高いことを示す。)

本研究により、ウェアラブルによるメンタル疾患発症の予兆検知・予防介入の可能性が示されたと考えています。日々の活動を詳細に捉えられるウェアラブルデータは、これまで把握が困難であった様々な疾病・ヘルスケア課題の早期発見・予防に活用できる可能性があると考えており、JMDCでは今後も研究および実用化に向けた取り組みを進めていきます。

■論文概要
・タイトル
Predictive Modeling of Mental Illness Onset using Wearable Devices and Medical Examination Data: Machine Learning Approach

・著者 (全員)
齋藤 知輝(1)、鈴木 輝(1)、岸 哲史(2)

(1)株式会社JMDC
(2)東京大学 大学院教育学研究科

・掲載誌
Frontiers in Digital Health
URL:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fdgth.2022.861808/abstract

Frontiers in Digital Healthは、ウェアラブル等によるデジタルヘルスの発展に寄与する研究を扱う査読付き国際学術誌です。

 

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