■ 本調査の背景と意義
近年、全身の健康と口腔の健康との関連性が注目されております。「経済財政運営と改革の基本方針2025」においても、生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に向けた具体的な取組の推進等の歯科口腔保健の強化が盛り込まれており、自治体や職域における歯科健診受診機会の拡大に向けた検証が求められています。
本調査では、歯科口腔保健の推進に向けた基礎資料を得ることを目的として、レセプトデータ等を活用し、歯科でのメインテナンスを目的とした受療(保険診療のみを対象、歯科メインテナンス受療)や歯の欠損の有無と、歯科疾患の重症化、生活習慣病、医療費等との関連を分析しました。
■ 本調査の実施方法
本調査では、JMDCと契約している健康保険組合・共済組合のうち、二次利用許諾が得られている保険者データを用い、分析方針を検討したうえで、分析を行いました。分析結果は、検討委員(歯科・公衆衛生・レセプトデータ分析に関する有識者)と意見聴取を行ったほか、検討委員会にて分析結果の信頼性や妥当性について精査しました。
■ 本調査で明らかになったこと
本調査により、主に以下の結果が確認されました。
【歯科メインテナンス受療と歯科疾患重症化】
● 本分析では、傾向スコアマッチングにより、交絡因子を調整した歯科メインテナンス受療あり群(64,391人)とそれに対応する受療なし群(64,391人)で、4年間(2021-2024年度)のアウトカムを比較しました。
● 歯科メインテナンス受療あり群は、受療なし群と比較して、残存歯減少数が1年間で0.03本少なく、統計的有意差が認められました。
● また、4年間の平均歯科疾患重症化率は、歯科メインテナンス受療あり群の方が受療なし群より3.9ポイント低く、統計的有意差が認められました。
● 一方で、4年間の一人あたり平均歯科医療費は、歯科メインテナンス受療あり群の方が受療なし群より約1.4万円高く、統計的有意差が認められました。

【歯の欠損の有無と全身の医療費の分析】
● 本分析では、傾向スコアマッチングにより、交絡因子を調整した歯の欠損なし群(30,175人)とそれに対応する欠損あり群(30,175人)で、9年間(2016-2024年度)のアウトカムを比較しました。
● 歯の欠損なし(残存歯数が24本以上)群は、欠損あり(残存歯数が24本未満)群と比較して、9年間の一人あたり平均医科・調剤医療費が約1.7万円低く、統計的有意差が認められました。
● また、9年間の一人あたり平均2型糖尿病医療費は、歯の欠損なし群の方が欠損あり群より約3,400円低く、統計的有意差が認められました。
● 生活習慣病罹患率、2型糖尿病罹患率、虚血性心疾患罹患率についても、歯の欠損なし群の方が、欠損あり群より、それぞれ1.1ポイント、1.1ポイント、0.7ポイント低く、いずれも統計的有意差が認められました。

■ 今後の展開
本調査では、レセプトデータ等を活用し、歯科メインテナンス受療や歯の欠損の有無と、口腔および全身の健康、医療費との関連を検証しました。
その結果、歯科メインテナンス受療は歯科疾患の重症化率や残存歯数の減少と関連しており、口腔の健康維持に重要な役割を果たす可能性が示唆されました。また、歯の欠損がないことは、生活習慣病や医科・調剤医療費の適正化に寄与する可能性が示唆されました。
本調査の結果は、生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に向けた取組推進の検討材料となりうるものと考えております。
なお、本調査の結果は、厚生労働省「全世代向けモデル歯科健康診査等実施事業(レセプトデータを活用した歯科健診の評価分析事業)に係る調査研究等一式(令和7年度委託事業)」として掲載されております。
今後も引き続き、JMDCが有する多様なデータを活用した実態調査を通じ、「社会課題に対しデータとICTの力で解決に取り組むことで、持続可能なヘルスケアシステムの実現」というJMDCの描く未来の実現に資する取り組みを推進してまいります。