■ 調査実施の背景と目的
難病は、患者数が少なく症状が多様であることなどから診断が難しく、診断に至るまでに長い期間を要する「診断ラグ」が大きな課題とされています。しかし、難病に関するデータは少ないことから、その実態はあまり明らかになっていません。
なお、本年5月に「診断ラグ」の実態に関する初期的な調査結果を公表しておりますが、本調査はより詳細な実態・負担を明らかにすることを目的としています。
■ 調査結果のハイライト
診断ラグ期間は、平均3.4年で、診断ラグが5年以上にわたる患者さんは全体の35%を占めており、また、診断ラグ期間は2014年度以降、年々長期化傾向にあることも分かっています。(本年5月プレスリリース)

今回、難病患者の診断ラグの実態とその負担について、以下の点が明らかになりました。
① 診断ラグ期間が長い患者さんほど、医療費が高く、通院日数や罹患疾病数も多い
・診断ラグ1年未満群と9年以上群の診断ラグ期間中の医療費の差は551万円/人で、診断ラグ期間が長いほど多くの医療費がかかっていました
・診断ラグが長い患者さんほど、確定診断前1年間の通院日数と罹患疾病数が多く、専門医からは、症状悪化・合併症併発の抑制に、早期診断・治療が重要との見解が示されました。

② 診断ラグが長い患者では専門医療機関へのアクセスが遅い
・診断ラグが長い患者ほど、専門医療機関(難病診療連携拠点病院等)へのアクセスが遅い傾向が見られました。
○特に診断ラグ9年以上の群では、初期症状から専門医療機関への受診までに約8.2年かかっていました。
○このことから、非専門医と専門医との連携体制整備が重要であることが示唆されました。

■ 今後の展望
JMDCは、今般の共同調査で得られた知見を基に、難病の早期診断・早期治療への貢献を目指してまいります。また、このようなアンメット・メディカルニーズの解決に資する取り組みを、製薬企業のみならず、医療従事者・患者さん・アカデミア・行政など多様なステークホルダーのみなさまへと展開し、さまざまな疾患の課題解決や治療環境整備に貢献できるよう、ご提案の幅を広げてまいります。
今後も引き続き、JMDCが有する多様なデータを活用した実態調査および希少疾患領域の課題解決を通じ、「社会課題に対しデータとICTの力で解決に取り組むことで、持続可能なヘルスケアシステムの実現」というJMDCの描く未来の実現に資する取り組みを推進してまいります。