株式会社JMDC(本社:東京都港区、代表取締役社長兼CEO:野口亮、以下「JMDC」)は、令和6年度厚生労働省事業「歯科健康診査推進事業に係る調査研究等一式」を受託し、生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に向けた取り組み推進のため、レセプトデータ等を活用し、歯科健診の効果(口腔と全身の健康の関係、医療費適正化効果等)について調査を実施いたしましたので、以下のとおりお知らせいたします。
■ 本調査の背景と意義
近年、全身の健康と口腔の健康との関連性が注目されておりますが、成人期以降、歯科健診の受診率が低く、職域を含めた歯科健診の充実の必要性が指摘されています。「経済財政運営と改革の基本方針2024」においても、生涯を通じた歯科健診に向けた具体的な取組の推進が掲げられていることから、職域における歯科健診の実施体制の整備が期待されています。本調査では、職域における歯科健診の効果を科学的に評価し、今後の職域のおける健診体制の構築に資するエビデンスを提供することを目的として、レセプトデータを活用し、歯科健診の受診が就労世代の健康状態や医療費に与える影響を分析しました。
■ 本調査の実施方法
本調査では、JMDCと契約している保険者のうち、歯科健診事業を実施する保険者へ、本事業の目的を説明した上で同意が得られた保険者の歯科健診データを受領し、分析方針の検討をしたうえで、分析を行いました。分析結果は、検討委員へメールやWEB面談で随時報告と意見聴取を行ったほか、2024年11月~2025年2月までに検討委員会を3回開催し、分析結果の信頼性や妥当性について精査しました。
■ 本調査で明らかになったこと
本調査により、主に以下の3点が明らかになりました。
【歯科健診の受診後に歯科受療は増えるのか?】
・歯科健診未受診者は歯科健診翌年度の平均歯科受療日数が1.7日であったのに対して、歯科健診受診者は歯科健診翌年度の平均歯科受療日数が1.9日と11%多く、統計的有意差が認められました。
【歯科健診受診により、3年間の生活習慣病罹患率に差があるか?】
・歯科健診未受診者は3年間の平均生活習慣病罹患率 が7.5%であったのに対して、歯科健診受診者では3年間の平均生活習慣病罹患率が7.0%であった。
【特に歯科健診の効果のある集団は?】
・歯科健診でう蝕・歯周病が指摘されて受診勧奨がされた者については、歯科健診未受診者の歯科健診翌年度の平均歯科受療日数が1.8日であったのに対して、歯科健診受診者は歯科健診翌年度の平均歯科受療日数が2.3日と31%高く、統計的有意差が認められた。
■ 今後の展開
本邦において、歯科健診の効果についての研究は十分でなく、本調査はこれまでの研究に比べ幅広い対象での歯科健診の効果を検証していることから、生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に向けた取り組み推進に向けての検討材料となりうるものと考えております。
また、歯科健診受診が歯科受療のきっかけになっている可能性が示唆されたので、歯科健診から歯科受療につなげるための、より効果的な施策や健診形態を検討していくことも考えられます。
なお、本調査の結果は、厚生労働省「就労世代の歯科健康診査等推進事業(レセプトデータを活用した歯科健診の評価分析事業)に係る調査研究等報告書(令和6年度委託事業)」として掲載されております。
今後も引き続き、JMDCが有する多様なデータを活用した実態調査を通じ、「社会課題に対しデータとICTの力で解決に取り組むことで、持続可能なヘルスケアシステムの実現」というJMDCの描く未来の実現に資する取り組みを推進してまいります。