株式会社JMDC(本社:東京都港区、代表取締役社長兼CEO:野口亮、以下「JMDC」)は、PHRサービス「Pep Up」において、体組成計・血圧計で測定したデータを入力しているユーザーと、そうでないユーザーの健診値の変化を比較する分析を行いました。
医療データと日々の計測データをID単位で紐づけて解析できるPep Upの分析基盤を活用し、年齢・性別・健診値・問診結果などの傾向が近いユーザー同士を比較(傾向スコアマッチング)したところ、データを入力しているユーザーでは体重・血圧がより改善する傾向が示唆されました。本リリースでは、その分析結果の概要を取り上げています。

■ 背景
体組成計に毎日乗るだけで体重が減る「計るだけダイエット」や、血圧計で測るだけで血圧が下がるといった話は広く知られており、こうした行動が生活習慣の改善につながることを示す調査は数多く存在します。しかしその多くは、同じ人の測定前後を比較するものや、測定している人だけを対象とするものであり、「測定・記録する」という行動そのものの効果を、健康意識の高い人が測定しているだけではないかという選択バイアスを考慮した上で大規模に検証した例は、ほとんどありません。

そこでJMDCでは、Pep Upへ体組成計・血圧計のデータを入力しているユーザーと、年齢・性別・過去の健診値・問診結果などの傾向が近いものの、データを入力していないユーザーを、傾向スコアマッチングによって抽出し、両群の健診値の変化を比較しました。これにより、「測定・記録する」という行動そのものが健診値の改善と関連しているのかを公平な形(因果推論的なアプローチ)で検証することが可能となっています。
こうした検証が可能となった背景には、JMDCが保有する健診・レセプトデータを交絡調整に活用できたことに加え、日本では毎年多くの人が健康診断を受診しており、家庭で計測をしていない人も含めて、家庭計測とは独立した標準化された測定結果が存在するという、日本特有のデータ環境があります。この2つがかみ合うことで、計測意欲の高い人に限らない大規模な集団での検証が実現しました。

なお、本分析は観察研究であり、示された差を直ちにデータ入力の純粋な因果効果と断定するものではありません※1

■ 分析結果
計測機器データを入力しているユーザーは、体重・血圧ともに改善傾向
Pep Upへ体組成計・血圧計のデータを入力したユーザーは、年齢・性別・健診値・問診の傾向が近いデータ入力なし群と比べて、1年間程度の健診値変化において、体重は0.7kg程度、血圧は1mmHg程度、改善する傾向が示唆されました※2。具体的には、体重は入力なし群が+0.3kgであったのに対し入力あり群は-0.4kg(群間差 -0.7kg)、収縮期血圧(SBP)は入力なし群-2.0mmHgに対し入力あり群-3.9mmHg(群間差 -2.0mmHg)、拡張期血圧(DBP)は入力なし群-1.5mmHgに対し入力あり群-2.6mmHg(群間差 -1.1mmHg)となり、いずれもP値は0.0001未満でした。

なお、血圧についてはデータ入力なし群でも低下がみられます。これは、血圧計を使うユーザーにはもともと血圧が高めの人が多く、傾向の近い対照群でも平均への回帰による低下が生じるためと考えられます。単純な前後比較ではこの低下分も「効果」として過大に見積もられる恐れがありますが、本分析では対照群との差分を取ることでその影響を除いた群間差を評価しています。
以上の結果から、体組成計に乗る・血圧計で測るといった日々のセルフモニタリングをPHRに記録・可視化する行動は、健診値の改善と関連している可能性が示唆されます。傾向の近いユーザー同士を比較した本分析の結果は、こうしたセルフモニタリングの記録・可視化の支援が健康行動の後押しとして有効であり得ることを、より確からしい形で示すものと考えられます。

※1 本分析は観察研究であり、ランダム化比較試験ではない。傾向スコアマッチングで観測された交絡因子の調整を行っているが、健康意識や生活環境等の未観測交絡の影響を完全に排除するものではなく、示された差をデータ入力の純粋な因果効果と断定することはできない。追跡期間は約1年間であり、長期的な効果の持続性については今後の検証を要する。
※2 母集団はPep Upユーザー(健保由来データのため75歳以上の高齢者は含まない)。比較対象は年度間の体重・収縮期血圧・拡張期血圧。データ入力あり群は、2021年度健診後〜2024年度健診の連続2回のペアがあり、1回目健診時点でPep Up登録から90日以上が経過しており、過去にデータ入力がなく、1回目健診後90日以内にデータ入力を6回以上行い、データ入力開始日から90日以降に健診があるユーザー。データ入力なし群は、過去にPep Upへ体組成計と血圧計のデータ入力がなく、2023年度と2024年度のペアがあり、データ入力を行っていないユーザーから、傾向スコアマッチングでデータ入力あり群に近い群を選定した。マッチングに用いた交絡因子は、性別、年齢、前年度健診結果及び付随する問診結果、(血圧のみ)1回目健診以前の降圧剤処方の有無。

■ 本分析に対するコメント
古井祐司 氏(東京大学 未来ビジョン研究センター 特任教授、自治医科大学 客員教授)
(保健医療政策、予防医学・データヘルスの観点)
「体重や血圧を測って記録する」という身近な行動の効果は経験的に語られてきましたが、意識の高い人が測っているだけではという疑問に、大規模データで正面から向き合った検証は限られていました。健診・レセプトデータと日々の計測記録を個人単位で結び付けたからこそ実現した分析であり、日常の小さな健康行動をデータで検証し、予防の具体的な打ち手につなげていく点に大きな意義があります。こうしたエビデンスの蓄積が、個々に合う健康づくりを後押しし、データに基づく予防の社会実装につながることを期待しています。

井出博生 氏(順天堂大学 健康データサイエンス研究科 准教授、東京大学 未来ビジョン研究センター 客員教授)
(健康政策、医療情報の観点)
日々の計測データと健診結果を個人単位で結び付け、大規模なデータから傾向の近い集団同士を公平に比較できる環境は国内でも希少であり、本分析はその強みを活かして日常の記録行動の健康上の価値をデータで示した好例です。保険者や企業が限られた資源の中で保健事業や健康経営を進めるうえで、どの支援に効果が見込めるかを示すエビデンスは極めて重要で、さらなる蓄積が求められています。今回のような検証が積み重なり、PHRを使ったこれまでにない形の健康づくりが進んでいくことを期待しています。

■ 今後の展開
本分析の枠組みは、体組成計・血圧計にとどまらず、Pep Upと連携するさまざまなヘルスケア製品・サービスへ拡張可能です。日々の計測・利用データを健診結果・レセプトデータとID単位で結び付け、大規模かつ公平な効果検証を行える分析基盤は国内でも極めて限られており、JMDCの強みであると考えています。
今後も引き続き、国内最大級の医療ビッグデータを用いたエビデンスの創出とPHRを軸とした健康行動支援ソリューションの提供により、一人ひとりの健康づくりと企業・保険者の健康経営の実践を強力に支援し、「社会課題に対しデータとICTの力で解決に取り組むことで、持続可能なヘルスケアシステムの実現」というJMDCの描く未来の実現と、「データの社会実装」に資する取組を推進してまいります。

【分析概要】
● 分析対象:PHRサービス「Pep Up」のユーザー
● 分析手法:傾向スコアマッチングによる群間比較(観察研究)
● 評価指標:年度間(1年間程度)の体重・収縮期血圧(SBP)・拡張期血圧(DBP)の変化

【Pep Upについて】
Pep Up(ペップアップ)は、JMDCが開発・提供し、保険者を中心にご利用いただいているPHRサービスです。Pep Upユーザーにおいては、スマートフォンアプリ等の手元の健康診断の結果や医療費のデータから自らの健康状態に関する気づきをご提供することができ、活動量計や様々な健康増進メニューによる意識変容や行動変容を促進しております。また、保険者においては、紙や対面で実施してきた業務の負荷軽減に貢献しています。
URL:https://stories.jmdc.co.jp/pepup

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